厚生労働省によると、心の病による労災申請が6年連続で増加、2018年度は1983年度の統計開始以降最多にになったという。
報道によれば、2019年4月に「働き方改革関連法」が施行され、時間外労働の上限規制が始まったこと、5月にパワハラ防止を義務付ける「女性活躍、ハラスメント規制法」が成立したことから、「法律の動きに合わせ、精神疾患も労災だという認識が高まり、申請増加につながったのではないか」とのことである。
精神障害を抱えていることに対して、偏見や怠惰であるという考え方は今に始まったことではをない。何が我々にとっての真なる「改革」であるのかということを考えなくてはならない。真剣に向き合わなければ、この社会は何れ崩壊してしまうのではないだろうか?
「精神疾病を未然に防ぐ」という意味では、ストレスチェックや働き方改革は大切である。ストレスをチェックすると心身の状況が分かり、働き方改革によって、過度な労働時間を減らすことはできるはずである。
近年、ビジネスシーンで「心理的安全性」という言葉が話題となった。米Googleが2016年に発表した労働改革プロジェクト「プロジェクトアリストテレス」の成果として、「心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである」と報告された。心理的安全性とは、弱みの吐露など一般的にはリスクと思われるような言動をしても、「このチームなら大丈夫だ」と信じられ、ありのままの自分をさらけ出せる安心、安全なチームの環境や雰囲気のことである。プロジェクトアリストテレスの報告では、心理的安全性は「チームの生産性」や「効果的なチーム」に主眼が置かれてる。
我々が今直面している問題は、「働き方改革」とは決して賃金や優遇などではなく、精神障害に至る労働環境の緩和であると言わざるを得ない。
その為には、何が問題であるのかを真剣に考え、仕事の分担や労働時間の問題、更に言うならば、旧日本型労働体系を見直す必要があるということである。
精神的な負担は誰もが抱えているのかも知れないが、「うつ病」になるほどデリケートな人材を如何に働いてもらうかを考え、企業としての価値を高めるかなのではないだろうか?
大企業などには、医師を配置し問題を解決するという方針を整えているところもあるが、「気のせい」であるとか「考え方を変えたほうがいい」などという他人事としてとらえる医師も少なくはない。
真なる「働き方改革」と「精神障害」とは切っても切り離せないものであり、我々にとっても決して「気のせい」であるとか「考え方を変えなければならない」という自己解決的発想をやめ、労働環境の改善を訴える場を拡充し、企業自体もそれを受け入れる必要があるということではないだろうか?