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執筆者の写真HIROKI OSADA

経済の停滞と方向性



我々にとって、経済はコロナ禍に於ける低迷を越え、コロナ流行以前の水準に戻りつつあるとされているわけであるが、ひとつ考えなければならないことは、コロナ禍以前の経済的水準が果たして向上的なものであったのか?という事である。

主観的な見解ではあるが、少なくとも、決して景気が上向き加減であったとは言えない。

私は、この経済向上の兆しは一時的なものではないかという事を危惧してやまない。

景気の動向を図り知ることは、困難なことかも知れないが、私たちの考え方の基準にある経済は、決して流動的ではないということに気づかされる。

言うまでもなく、実質GDPは2019年平均の水準まで回復しきれていない。

2023年の実質GDP成長率は、前年比+1%台の緩やかな回復が続く見通しであると言われるが、海外経済の減速により輸出は減速することが想定されるが、コロナ禍からの回復余地が残っている個人消費や設備投資の回復が続き、内需主導の緩やかな回復が続くとみられている。資源高や円安による輸入物価の上昇を主因としたインフレが続いている。食料品や電気・ガス料金の値上げなどが家計も圧迫し、十分な価格転嫁ができない企業の収益を圧迫するなど、日本経済の圧迫材料となっているようだ。

市場機能の改善を謳った政策修正後も利回り曲線(イールドカーブ)の歪みが大きく解消されていない。翌日物金利スワップ(OIS)市場ではマイナス金利政策解除の織り込みが強まっている点にも注視が必要である。

2023年はコロナ禍における、資金繰り支援策の返済の本格化や利払いの開始、原材料コスト高による収益の圧迫や金利上昇などの影響を受けて、中小企業を中心に倒産件数が増加することが見込まれている。

賃金については、名目賃金が上昇している一方で、物価変動の影響を除いた実質賃金は減少が続いているわけであり、景気への悪影響が懸念されているのである。景気後退と物価高が同時進行する「スタグフレーション」に陥らないためにも、需要増加を伴う好循環に繋げる必要がある。

様々な要因・要素が絡み合っている2023年の方向性は決して明るいとは言いづらい。経済活動がコロナの蔓延により一時的に下向きになっただけであり、今後の世界情勢は相対的にみて暗いともいえる。この状況にカンフル剤はなく、抜本的な問題の解決には多大な時間が必要なのかも知れない。

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