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執筆者の写真HIROKI OSADA

エピソード2ー出会いと別れ


あの日、私は少なからず酩酊していたと思う。

闇夜が迫る中、私は小雨の降りしきる街灯のない坂を下っていた。暗黒とはいつも恐怖を思い起こさせる。私の脳裏にこびり付いて乖離しない想いがあった。幼いころ、私はいつも孤独であった。父は仕事で夜遅くまで働き、母も夕方までパートタイムの仕事をしていたせいで、いつも私の周囲に家族はいなかった。

父は、ある意味に於いてアルコール依存症の帰来があった。そしてまた、仕事でのストレスから「うつ病」を発症しているようであった。「苦しみ」とは人にとって、最大の壁である「肉体的」な苦しみよりも「精神的」な苦しみの方が、よほど苦しい。

だから、父はアルコールに依存していたのだろうと思っている。それが、多少なりとも父にとっての「精神安定剤」代わりだったのだろう。毎日、父はビールを飲んでいた。

元々、病院嫌いな父が母に説得され、近くの総合病院を受診した時は、既に身体共に限界に達していた。その後、幾度となく転院を繰り返し、幾度となく危篤状態に陥り、結果的に「腎不全」を併発し、人工透析をしないと生きていけない体になってしまった。

それから間もなくして旅立ってしまうのだが、人間にとって「生きる意味」とは一体何なのだろう?と私は疑問と父への不確かな想いを持ってしまった。

父は何故、死ななければならなかったのだろうか?死する日、窓外は桜の花弁が舞っていた。暖かで穏やかだったあの日、父はこの世を去ってしまった。

人の一生はそれぞれではあるが、最期に父の口元からは掠れた声が漏れた。

只、一言「疲れた。。。」というものであった。


私は坂道を下りながら、熱いものがこみ上げてくることを意識していた。

小雨は、いつの間にか大粒の雨に変わって私の元に降り注いでいた。

 

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